Whatever

花より男子 二次創作小説 CP 類×つくし

 

ごあいさつ 




お越しいただき、ありがとうございます。

管理人のsoです。
当blogは、「花より男子」の二次小説blogです。
カップリングは 『 類×つくし 』 オンリーです。
その他のCP予定は今のところ全くありません。

原作者様および出版社様等とは一切関係ありません。
原作主義の方、原作のイメージを壊したくない方は、
決してお読みにならないようお願い致します。

なお、全ての閲覧は自己責任でお願いします。



当blogのタイトル、URL、作品の一部であったとしても、
無断転載は禁止です。





so




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category: ごあいさつ

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◆短編

・プロポーズ ・以心伝心 ・ずっと先 ・flutter ・marriage ・恋愛の法則(前) (後) 
・乙女のはにかみ ・離陸態勢 ・リラの咲く頃 ・meet a deadline ・ラブレター 
・きっかけSide:Rui(2012桃の節句) ・ウソつき(前)(後) ・free spirit ・泣き虫 
・予定調和 ・南風 ・Love is giving ・近距離恋愛 ・below the horizon 
・heartbreak law (ver.Rui) ・heartbreak law (ver.Tsukushi)  ・初恋 ・ラストステップ 
・Cheap Love ・仲良し ・No End of Love ・Dreamscape  ・Snowscape  ・約束
・Overcast Kiss ・恋愛管理 ・Songbird ・Once in a Lifetime (前) (中) (後)
・Starting tomorrow. (2019.3.29)  ・day after tomorrow ・パスポート
・はじまり ・いじわる ・ファーストステップ ・スカイ・ダイビング
・Looking for the one ・glittering or sparkling  ・out of the blue・motion blue


イベント(短編)
・降っても降らなくても(2011七夕) ・類のプレゼント (2011Halloween) 
・by and by前 (2012WD) ・甘くてアマイ(2013V.D.) (前)(後)オマケ ・infinity (2013RuiBD)
・1224 (2019Christmas) ・1225 (2019Christmas) ・1227-1228 (2019TsukushiBirthday)
・チョコレートの味(2020VD)
・3月30日(2020RuiBD)
・make a declaration of love.(2022VD)
・チョコレートな関係 (2022VD) 1 2 3番外編 (完)


・恋と幼馴染と(2020VD)
 → 幼馴染と恋人と(2020WD) 1 2 3 4 4.5R1 4.5R2 5 6 7 7.5R1 7.5R2 8 9
 → Love&Old playmate (完)


※2011クリスマス企画
・告白の行方 (前) (後)  ・すれ違いの行方 (前) (後)


二人暮らしシリーズ(完)
・二人暮らし   ・GAME  ・オオカミ青年  ・冷たいロマンチック(2011つくしB.D)
・ワガママ(2012類B.D)
二人暮らし番外
・because you are very special to me. (2012VD)


You complete me. シリーズ(完)
・You complete me. (2019VD)・You complete me. (2019WD) 
 → ・To me, you are perfect.1 2・You make my life complete.
<番外編> スカイ・ロック・ゲート 1 2 3 4


わたしの旦那様シリーズ (それそれに独立した短編。 続きものではありません)
・Good Morning  ・ストロベリーフィールド  ・わたしのおしごと  ・秘密
・おめかし  ・なみだのあと(2012つくしBD)  ・お買いもの ・定期メンテナンス


・花沢類のアルバイト 1 2...


・first experience 1 2 3 4 (完)


・僕らの恋 1 2 3 (終)





◆中編

・シアワセな日々 1 2 3 (終)
 <番外編> ・シアワセな日々 : ahead of that  
    ・snow drop 1 2 3 4 5 6 7 8 (完)
・シアワセな日々 : つくしの反乱 1 2 3 4 5 6 7 8 (終)
・シアワセな日々Ⅱ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 (終)
・シアワセな日々Ⅱ : 逆襲の類 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 (完)


・つくしの長い一日 1 2 3 4 5 6 (完)


※1→2→3→4→a clear day→5→a rainy day→6→逆光→7→tea break→8→閃光→9
・sugar 1 2 3 4 5 6 7 8 9 (完)
 <番外編> ・a clear day ・a rainy day ・逆光  ・tea break ・閃光 (前) (後)
 <特別編> ・つくちゃんと一緒  ・お願いごと  ・ごはんだよ
       ・Happy Holidays(前)(後)(2012Xmas) ・sugar baby (2019桃の節句) ・寝顔

sugar番外シリーズ (中編のsugar番外にリンクした短編)
・On the sun in the sky ・水色の傘 ・横顔 ・落書き ・コイビト ・wrong guess


・The Best Lasts Forever 1 2 3 4 5 6 7 8 (完)


・天然自然 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15.1 15.2 16 (完)
 <番外編> ・定期便  ・年始のあいさつ  ・Flowers for…  ・affection 
      ・年始の挨拶(2013)


ポップシリーズ
・ポップチューン  ・ミディアムポップ  ・ポップコンフェクション  ・ポップロック
・ポップビート  ・テクノポップ  ・ポップナンバー (完)
(ポップシリーズ続編)
・ポップスター 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 (完)


・ダブルスチール 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 (完)


・抹茶みるく 1 2 3 4 5 6 7 8 (完)


※不定期連載
・泰然自若 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 ......


・forget-me-not 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 (完)
・forget-me-not - cut the knot - 1 2 3 4 5 6 (完)


・Higher than the sun 1 2 3 4 5 6 (完)


・永遠と一日 Rui Akira Tsukasa Sojiro Tsukushi永遠の手 (完)


・天高く恋燃ゆる秋 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 12.5R 13 (完)

   <番外編>  秋深き 隣は恋を する人ぞ


・What's … between friends? 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 (完)

   <番外編>  between ourselves 1 2 3 4 5 6 (完)




◆長編

・and evening 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
        21 22 23 24 25 26 (終)
       ・bright golden yellow  ・ultramarine (完)
   
  <番外編> 観覧車



・Viva La Vida 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 (完)

  <特別編> ・This love is two dollars. 1 2 3 4 5 6 7 (完)



・A solar fragment. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 (完)

  <特別編> ・ソメイヨシノ(2012類B.D) 1 2 3 (完)



・little by little 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 (完)

  <aftereffect> ・うたた寝 (2019RuiBD)



・君の恋人 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 (完)


・First crush 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 (完)

  <Extra Edition> First priority 1 2 3 (完)
          (One Big) First Project 1 2 3(完)


・恋愛小説 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 (完)


・Heart touching happiness
  P 1 2 3 4 5 6 6.5R 7 7.5R 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 21.5R 22 23 24 E (完)





◇コラボ
 (類つくサイトマスターさまとのコラボレーション作品)

・Morning Glory 1 2 3 4 5 5.5 6 7 (完)  ・朝顔の花永遠

・木枯らしと陽だまり 1 2 3 4 5 6 7 8 (完)
 <続編> ※ so単独執筆
  ・そよ風と水たまり 1 2 3 (完)





All writing by so.


■ final note












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afterword of cut the knot 






カウンターアタック婚(w)から妊娠ときて、
類の両親が後悔と反省をしたところで本編は終わったのですが、
内容の割にはスピード感のあるサラッとしたお話になってしまった事もあって、
類くんの心情とか両親の反省の色とか...まあそれ等を後日談に。


本編で司がわざとに自分とつくしには関係が無かったこと、
むしろ類とだけ関係を持っていたことを暗に伝えていたのも、
つまるところは自分との過去の恋愛絡みも二人の結婚のネックになっているなら、
違う、そうじゃない。ってことをね。

そんなこんなで本編では表面上は和解して終わったのだけれど、
本当の意味での和解はしてなかったもんね。

やはり大事な一人息子の子供...つまり花沢の次なる後継者が誕生しているわけだから、
そりゃあ両親としては気になるところ。
それにやはりその大事な一人息子にいつまでもネチネチとやられるのも悲しいですしねw
自分たちが蒔いた種であったとしても許して欲しいもの。

だって類くんは花沢唯一の子供...一人息子だったわけで、
そんな大切な一人息子に嫌われるなんて、その痛み、尋常じゃないはずwww

まあ、両親としては待望の一人息子に並々ならぬ期待をかけて、
それに比例して物凄く大切に育てて来たんだろうから、
伴侶は厳選をしたいと思ったのも当然かもしれない......。

しかし類は許さないw
絶対に許さない。
絶許←

でもいつまでもこの状態...と言うか、類の根っこがそれであるのは、
つくしの性格上、それはとても悲しく納得のいかないところなんじゃないかなあと思いまして。
類が類自身を許せないのてあれば、
そうさせてしまったのは自分だと...
つくしがお得意の自己嫌悪で責任を感じるってあるあるですし(w)

つくしちゃんにここまで言わせてしまったら、つくし命の類くんとしては不甲斐なさ全開ですもん。
それはもう全力で向き合いますよ。

そんな感じで二人の中にずーっとあったであろう心残りみたいなものも、
全てが霧散していくわけじゃないけれど、徐々に揮発していっているのではないでしょうか。

それは色んな心情が重なって、類くんの心も成長していっているのでしょう。



ああ...度々お話していますが登場人物の名前を考えるのが苦痛な私なので、
いつもは適当に野球選手の苗字から付けているのですが(w)、
類つくの子供の名前ってなるとさすがに適当に野球選手の名前からランダムで選ぶのもどうかと...
私も人並に悩みます。
ここのブログでは子供に名前が付いているのは「sugar」だけ。
個人的にはこれ以外で子供を書くことは無いと決めていたのでこの続編はちょっと悩みましたよ。
後日談ともなれば妊娠していた訳だから、
誕生させないことに話は進まないし、誕生させたら名前無いのもおかしいし...ってことで、
仕方なく...と言うか、ひねり出したと言うか......。

本編で「植物の名前を付けよう」みたいな二人の会話を書いてしまったので、
やっちまったなあ...とも思ったんですけどw

結局は一番最初に思いついた名前にしました。
次男はそれに倣って付けた感じです。


タイトル「cut the knot」
簡単に言えば「和解」と言うかね。
難事を一気にね...こう、二人の根底にあったモヤモヤをパッと鮮明にするって言うかね。
問題を鮮やかに解決する。ってことで。

余談ですが、長男の名前を決めてタイトルが浮かんだ時に名前を変えたんですよ。
それで全て名前の部分を書き直して...ってやっていたのですが、
3年の時を経て公開する前の誤字脱字チェックで読み返したところ何だかしっくりこなくって、
やっぱ最初の名前の方にしとこ!って...またしても名前の部分をチマチマ書き直す作業...w


本編同様にサクサクとした短いお話でしたが、
「つくしはお花」ってことで、ようやく「勿忘草」の名も出てきたところで終わりです。


本編から復習して読んで頂いた皆様、
いつものことながら拍手やコメントを残して頂いた皆様、この度もありがとうございました。

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forget-me-not - cut the knot 6 -  

Chapter : 6





冬の終りが近付くにつれ、つくしは俺と両親のことを口にしなくなって、
春の少し前に、俺たちには二人目の子供が生まれた。

つくしが何故か確信していた通り男の子。

誕生と同時に病院にやって来た両親は、俺が抱いていた柾に笑い掛けたり話し掛けたり......
俺の知らない、想像さえした事の無かった二人の姿に衝撃を受けた。
しかも、生まれてきた次男も俺に似てるだの兄弟そっくりだの、
まだ赤ん坊なのに何が分かるのかと思うようなことを好き勝手に言っていた。



両親の結婚から数年後にようやく生まれた花沢待望の子供...それが俺だった。

「あなたが生まれてきてくれて...暫くは身体が弱くて心配したの。
 だから私もお父さんも...柾君のことが心配で......」

ただそれだけだったのだと母は言った。

「ふぅん?
 身体的に問題が見られなくなった頃には心を病んだわけですか」

両親をチラリと見て呆れた様に肩を竦めれば、
「類...子供の幸せを願うのは私達だって同じだよ」と父。

「はあ? 幸せを奪っておいて何言ってんだ!?」

「間違いだった。
 私たちはお前の幸せを間違えてしまった」


つくしのこと誤解していたって、
それは何度も聞いていたけれど、言い訳に過ぎないと聞く耳を持たなかった。

世間知らずで何不自由なく育ってきた俺にとって、
自分とは全く別の環境で育ってきた女性は新鮮に映っていたのだろうし、
司とダメになった事も相まって恋や愛をはき違えてしまったと思っていたと。

だから反対をした、俺の目を覚まさせたかった。
いつかきっと自分達に感謝をする日が来ると信じて疑わなかったと。


「間違っていた」


目が覚めたのは自分たちの方だったと。





***





相変わらず我が家に入り浸っているあきらと総二郎は、
勝手に柾に「じろー」と「あっきー」を覚えさせて満足している。

ちゃんとした発音は出来ていないけれど、柾はしっかり覚えてしまった模様。

「ちび2号もルックスは類に似てるな」と眠る次男を覗き込むあきらに、
「ちび2号はやめろよ」と睨んでおく。

次男は椋(りょう)

最近知ったことだけど、花沢の敷地内に新設された庭には、
柾の木に続いて椋の木が植樹されたとのこと。
家に来る使用人から聞いたのだとつくしが言っていた。

「どっちが花沢の後継者になるかな?」と気の早い総二郎が二人を見比べて、
「どっちでもいいな」と笑う。

「類の後は椋になると思うよ」と、また確信めいて次男を指名するつくしに、
俺も総二郎もあきらも首を傾げる。

「夢で見たの」
あれは椋だった。間違いない。と、どんな夢を見たのかつくしは大きく頷く。

俺としては名の通り二人には真っ直ぐのびのびと育ってくれれば良いわけで、
子供たちに俺の後継者になって欲しいとは思っていない。
それなりの教育は可能な限り受けさせるけれど、選択は本人次第だと思っている。

「イタリアだろ? 子育て大丈夫か?」と半年は先の秋のイタリア移住について、
心配性のあきらが何故か「俺もイタリアに赴任すっかな...」と本気の声音で呟く。

「あきらは日本本社で副社長就任が待ってるんじゃないの」と呆れ返りながら言えば、
「バカだな。いずれ社長になるんだ。そんなもんあってもなくても良いんだよ」と笑う。

「俺もちび2人のこと気になるからイタリアに用事作りたいわ」と総二郎が続く。

「まあ、あたしも美作さんと西門さんが近くにいてくれると心強いけどさあ~」なんて、
つくしまでもが言い出して俺だけが黙り込む。

「日本の茶道文化の発展云々でイタリア行くかな」
「アリじゃね? 美作も欧州進出に力入れてるところだし、俺は問題なく行けそう」

つくしに心強いなんて言われて俄然ノリ気になった二人に溜息。





***





「子育てが不安な気持ちも分かるけどさ......」と、
ベッドの上でイタリア語の教則本片手に、ニヤニヤしているつくしに話し掛けると、
「気にしてるの? さっきの」と、クスクス笑ってパタンと本を閉じてイヤホンを外す。

つくしのイタリア語は本人が「完璧」だと自画自賛しながらニヤけるぐらいには上達している。

「花沢の家からも使用人さんが来てくれるんでしょ? 不安はないよ」
「あきらと総二郎がいたら心強いなんて...俺だけだと不安ってことだろ?」

つい不貞腐れた気持ちになるのは仕方ないと思う。

「また被害妄想?」
クスクスとするつくしはくるりと俺に向き直る。

「あたしの忘れられない人は類だけなのに」

急に真顔でそんなことをサラリと言ってくるから、
「イタリア語...完璧でも一人で出歩いたりはしないでよ」と、
ついそんなイタリアに行ってからの日常生活について注意をしてしまう。

照れくさい俺のことを知ってか知らずか、口うるさい夫だと言う目で俺を見る。

「一人では出歩きませんよー。 柾と椋と3人ですけどー」
「赤ん坊を人数に入れないで。そういう事じゃないから」
「散歩とか買い物ぐらいは良いでしょ!」
「ダメ」

「類は過保護すぎるよ」
「つくしには過保護過ぎるぐらいが丁度いいの」
「どーゆ意味よ?」

不貞腐れるつくしの頬を突いて、くだらなくもつまらなくはない言い争いに笑い合う。

「週末、俺の実家に行こうか?」
「......花沢の?」
「うん。 嫌じゃ無ければ父さんと母さんと食事しない?」
「うん。いいよ」

「嫌じゃないよ」と嬉しそうに転がるような声。


許せなかった自分自身への憤りが全て霧散したわけじゃないけれど、
少しだけそれと向き合えるようになった。

父になる。とはそういう事だと、昨今の俺は思ったりしている。


「花を買っていこう」


小さな4つの手に花を持たせて出掛けよう。


二人で見てきた全ての景色のような、
新緑の香りや、それを運ぶ風に舞っていた花びらのような、
そんな小さな花を持って行こう。


「どんな花がいいかな?」
「つくしみたいな花にしようよ」
「つくしは雑草だってば」

「つくしは花...だろ?」


校舎の片隅で隠れるように咲いていた。
ひっそりと力強く真っ直ぐに。

俺が最初に見つけたんだ。

ベッドサイドの勿忘草にも似たそれは、
幸せの象徴のような、野に咲く小さな青い花。










Fin.









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forget-me-not - cut the knot 5 -  

Chapter : 5





10日間の出張を終えて帰宅。

「見て」

玄関で「お帰り」と「ただいま」と、緩く抱き合ってキスを......と、いったところで、
スルリと俺から離れたつくしが、
どこか得意気な表情で目を向けるのは乳白色と黄色の花の寄せ植え。

「買ったの?」と、少し驚いてしまうのは、
つくしが自ら花を買って来たのは初めてだから。

「うん。 ウインターコスモスだよ」

「冬にしか咲かない花なんだって」と、「知ってた?」と首を傾げる。

「コスモス科じゃないんだよな」
「さすが類! 花にも詳しいなんて、英才教育はそこまで網羅してるの!?」

感心したようなつくしだけど、すぐに口元を綻ばせて、
「どうかな?」と期待に満ちた瞳で見つめてくる。

「いいんじゃない? 玄関が明るくなるな」
「でしょー!」

「じゃあ、俺からは......」

手渡すのは白と赤のペルネチアの寄せ植え。

「かわいい。なにこれ?」
「真珠の木って言われてんだ。 ハッピーベリーだよ」
「真珠!? 確かに、この白いの真珠っぽい!」

指先で触れて、うふふ...と微笑む。

ウィンターコスモスの隣に飾られる。





***





相変わらず眠ってばかりの息子を眺めて、
こんなにも眺めても飽きないものだな...と思ったり。

花を贈られたのは初めてだなと、少し照れくさくもなる。

ふと俺に贈りたくなったのだと、つくしは照れもせずに言っていた。
ウィンターコスモスを選んだのは、秋の花だからという、それだけの理由だと。
この時期から咲くなら、暫く楽しめるからと、もったいないが口癖のつくしらしい選択。

捻った足首はもうすっかり良くなったと、西門家も大袈裟だと、
金持ちは何でも大袈裟なのだと、眉根を寄せるけれど、
大袈裟なぐらいが、今のつくしを律するには丁度良いとさえ思う。

「イタリアに行くよ」
「え...転勤?」

「転勤か...そうだな......。 10年単位だけどね」

「ついに海外赴任かー」とつくしは驚くでもなく、
ただ、イタリア語は「ボーノ」しか分からないんだけど?と俺を見つめる。

「チャオ!も、わかるだろ?」
「ハーイ!みたいな感じだよね? あ、ボンジョルノもわかる」
「じゃあ、問題ないな」

揶揄わないでと頬を膨らませるけれど、すぐにクスクスと笑う。

子供が生まれて少し落ち着いたら出国。
子育てもあるし、花沢から使用人を数人連れて行くよと予定を告げれば、
「ありがたい」と呟くように言うから笑ってしまう。






















休日の午後、うたた寝から起きて欠伸。

春が来る前に二人目も生まれてくる予定。

同じように目を覚ましたつくしが隣で伸びをする。

「柾もまだ寝てるな」

息子は健康優良児。
お手本のような赤ちゃんだと言われたなんて、つくしは得意気だったけれど、
医者なんてみんなにそう言ってんじゃないの?という気がしないでもない。

「類はあたしのこと許せる?」

唐突に問われて、そっと柾を覗き込んでいた俺は振り向く。

「意味わかんない」と首を傾げれば、
「あたしのこと、許せるか?ってこと」なんて、やっぱり意味不明。

俺に何か許しを乞うようなことをしたのか?と聞けば、「ないよー」なんて微笑む。

「でも、あたしは類を諦めさせたことがあるよ」
「それは...」
「あたしが負けたんだよ。 屈したの、花沢に。 それで類を振ったの」
「そうじゃないだろ」
「そうだよ。 あの時、類の手を離さずに二人で逃げれば良かったかな?」

例えば逃げたとして、どこに逃げられたのだろうか。
どこまで逃げられて、いつまで逃げ続けられたのだろうか。

答えは容易い。

どこにも逃げられなかった。

「それでも逃げようとしていたら、
 何かが少し変わって、あたしも類も別々の人を選んでいたかもね」
「......」

逃げられる場所なんて、世界中のどこにも無いことぐらい、あの頃の俺たちは知っていたから、
だからつくしはあの日、俺に「ごめんね」と謝った。

「あたしが類を許さなければ満足する?」
「......さっきから何言ってんだよ」
「類がいつまでも何も誰も...自分さえも許そうとしないからだよ」

許せるわけがなかった。
何よりも、誰よりも、俺は俺が許せなかった。

今がどんなに幸せで、美しくても、
何も出来なかった、守れなかった、別れを言わせてしまった、謝らせてしまった、
あの頃の俺の罪悪感が消えることは無くて、
幸せだと思う度に、美しいと息を飲む度に、思い出すんだ。


「あたしは、あたしを許して欲しい」

俺の手に触れる、その手が少し震えていて、
つくしを見れば俯いたまま俺の指先を柾がするようにギュッと握る。

「あたしは許されたいよ......」

つくしが許されたいと願う事など何も無いのだと、
急にどうした?と、頭を撫でて引き寄せれば、その肩が震えている。

「弱くて、小さくて、何も持たないあたしが類を好きになって、ごめんなさい」
「...何、言ってんだ?」

「あたしが類を好きにならなければ、類の心にいつまでも許せない類を作ることなんて無かった」
「...つくしのせいじゃないから」
「あたしのせいだよ。 あたしが類を好きになって期待させちゃったからだよ」

好きにならず、否、好きになっていたとしても、
強い心で、司のことがあったのだから鉄の意志でその感情を押し込めるべきだったのにと、
そうしていたら、あの頃の俺たちが、あんなに悲しくなることも、
俺がいつまでも固執することも無かったと、つくしの涙声が小さく響く。

「それでも、あたしは類を好きになった、あたしを許して欲しい」
「......」
「あの頃、同じ轍を踏むかもしれないと解っていても類の隣を望んだあたしを許して欲しい」

許すも許さないも無いと、俺の口からは大きな溜息のような吐息が落ちるだけで、
こんなことを言われるなんて、ただの一滴も想像すらしていなかった。

「自分から望んだのに、闘いもせずに負けを認めて、
 類から離れて行ったあたしを許して欲しい」

午後の陽射しが照らす部屋には、
ベビーベッドの上で小さな命が何の不安も不満も無く、ただ眠っていて、
俺の胸に顔を埋めたつくしが、俺の指先を震える手のひらで握りながら俺に許しを乞う。

「類が類自身を許せないのなら、あたしだって、あたしを許せないよ」

だけど、許されるものなら許して欲しいと言う。

「許してよ、類......」
「許すも許さないも無いけど、それが望みなら、その言葉で納得するなら、許すよ」

「あたしも類を許すから」
「......」

「こんなに好きにさせたのに、家の反対で何も出来なくて、
 あたしに別れを言わせて、去って行ったこと、あたしは許すから」

涙声はいつの間にか、涙になって、
顔を上げたつくしの頬にいくつも伝って流れて、
それは、俺が許せなかった俺自身の過去までもを流すみたいな美しさで、息を飲む。

「道明寺の家と何も変わらないこと解っていたくせに、あたしに好きだと言って、
 その気にさせて、あっと言う間にあたしを置いて行ってしまったこと、許すから......」

俺は許されたかった訳じゃない。
許してほしいなんて思った事など一度も無い。
そもそも、誰に、何に、許されるものでもなかった。

「幸せになって...なんて、無責任な別れの言葉を言って、
 それなのに、俺を忘れないでなんて、
 自分勝手な想いだけ残して去って行ったことも許すから......」

あの日、小さな部屋につくしを一人残して俺は扉を閉じた。
振り返らなかったのではなくて、振り返ることが出来なかった。
だって、きっと、泣き笑いで手を振っていると思ったから。

「そんな言葉で、ずっとあたしの心を縛り続けてたのに、
 自分は婚約して結婚しようとしていたことも、許してあげるから......」

想いを残すことぐらいなら、許されるような気がしたんだ。
忘れないでいてくれたら、それだけで、
いつの日か、振り返られるのではないかと思ったんだ。

泣いていても、笑っていても、
後悔と無念さだけが留まっていることなんて、とっくに知っていたのに。


許せなかった。
何もかも。

何よりも、俺自身が。


ただ、今、許されるなら、許して欲しいと思う。


何も出来なかった、守れなかった、無力なあの頃の俺が、
謝らせて、別れの言葉を言わせてしまったこと、
そうして、自分勝手に傷つけてしまったこと、
許して欲しいと思う。


「許してよ。 償いなら何でもするから......」
「償いは、一生愛するって言ってたでしょ。 忘れないでよ」
「......うん」


午後の陽射しと、うたた寝の後の空腹と。
泣き笑うつくしの濡れた桃色の頬と。

振り返れば、いつの間にか目を開けていた息子が大人しく俺を見ていて、
小さな手のひらを精一杯伸ばしてくる。


「柾はパパの指が好きだね。 安心するんだよね」


そう、もう片方の俺の手の指の先を握るつくしの手のひらが温かくて、
それは、あの頃から変わっていないことを、急に思い出した。









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