Whatever

花より男子 二次創作小説 CP 類×つくし

 

ごあいさつ 




お越しいただき、ありがとうございます。

管理人のsoです。
当blogは、「花より男子」の二次小説blogです。
カップリングは 『 類×つくし 』 オンリーです。
その他のCP予定は今のところ全くありません。

原作者様および出版社様等とは一切関係ありません。
原作主義の方、原作のイメージを壊したくない方は、
決してお読みにならないようお願い致します。

なお、全ての閲覧は自己責任でお願いします。



当blogのタイトル、URL、作品の一部であったとしても、
無断転載は禁止です。





so




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category: ごあいさつ

thread: 管理人より - janre: その他

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◆短編

・プロポーズ ・以心伝心 ・ずっと先 ・flutter ・marriage ・恋愛の法則(前) (後) 
・乙女のはにかみ ・離陸態勢 ・リラの咲く頃 ・meet a deadline ・ラブレター 
・きっかけSide:Rui(2012桃の節句) ・ウソつき(前)(後) ・free spirit ・泣き虫 
・予定調和 ・南風 ・Love is giving ・近距離恋愛 ・below the horizon 
・heartbreak law (ver.Rui) ・heartbreak law (ver.Tsukushi)  ・初恋 ・ラストステップ 
・Cheap Love ・仲良し ・No End of Love ・Dreamscape  ・Snowscape  ・約束
・Overcast Kiss ・恋愛管理 ・Songbird ・Once in a Lifetime (前) (中) (後)
・Starting tomorrow. (2019.3.29)  ・day after tomorrow ・パスポート
・はじまり ・いじわる ・ファーストステップ ・スカイ・ダイビング
・Looking for the one ・glittering or sparkling  ・out of the blue・motion blue


イベント(短編)
・降っても降らなくても(2011七夕) ・類のプレゼント (2011Halloween) 
・by and by前 (2012WD) ・甘くてアマイ(2013V.D.) (前)(後)オマケ ・infinity (2013RuiBD)
・1224 (2019Christmas) ・1225 (2019Christmas) ・1227-1228 (2019TsukushiBirthday)
・チョコレートの味(2020VD)
・3月30日(2020RuiBD)


・恋と幼馴染と(2020VD)
 → 幼馴染と恋人と(2020WD) 1 2 3 4 4.5R1 4.5R2 5 6 7 7.5R1 7.5R2 8 9
 → Love&Old playmate (完)


※2011クリスマス企画
・告白の行方 (前) (後)  ・すれ違いの行方 (前) (後)


二人暮らしシリーズ(完)
・二人暮らし   ・GAME  ・オオカミ青年  ・冷たいロマンチック(2011つくしB.D)
・ワガママ(2012類B.D)
二人暮らし番外
・because you are very special to me. (2012VD)


You complete me. シリーズ(完)
・You complete me. (2019VD)・You complete me. (2019WD) 
 → ・To me, you are perfect.1 2・You make my life complete.
<番外編> スカイ・ロック・ゲート 1 2 3 4


わたしの旦那様シリーズ (それそれに独立した短編。 続きものではありません)
・Good Morning  ・ストロベリーフィールド  ・わたしのおしごと  ・秘密
・おめかし  ・なみだのあと(2012つくしBD)  ・お買いもの ・定期メンテナンス


・花沢類のアルバイト 1 2...


・first experience 1 2 3 4 (完)


・僕らの恋 1 2 3 (終)





◆中編

・シアワセな日々 1 2 3 (終)
 <番外編> ・シアワセな日々 : ahead of that  
    ・snow drop 1 2 3 4 5 6 7 8 (完)
・シアワセな日々 : つくしの反乱 1 2 3 4 5 6 7 8 (終)
・シアワセな日々Ⅱ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 (終)
・シアワセな日々Ⅱ : 逆襲の類 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 (完)


・つくしの長い一日 1 2 3 4 5 6 (完)


※1→2→3→4→a clear day→5→a rainy day→6→逆光→7→tea break→8→閃光→9
・sugar 1 2 3 4 5 6 7 8 9 (完)
 <番外編> ・a clear day ・a rainy day ・逆光  ・tea break ・閃光 (前) (後)
 <特別編> ・つくちゃんと一緒  ・お願いごと  ・ごはんだよ
       ・Happy Holidays(前)(後)(2012Xmas) ・sugar baby (2019桃の節句) ・寝顔

sugar番外シリーズ (中編のsugar番外にリンクした短編)
・On the sun in the sky ・水色の傘 ・横顔 ・落書き ・コイビト ・wrong guess


・The Best Lasts Forever 1 2 3 4 5 6 7 8 (完)


・天然自然 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15.1 15.2 16 (完)
 <番外編> ・定期便  ・年始のあいさつ  ・Flowers for…  ・affection 
      ・年始の挨拶(2013)


ポップシリーズ
・ポップチューン  ・ミディアムポップ  ・ポップコンフェクション  ・ポップロック
・ポップビート  ・テクノポップ  ・ポップナンバー (完)
(ポップシリーズ続編)
・ポップスター 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 (完)


・ダブルスチール 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 (完)


・抹茶みるく 1 2 3 4 5 6 7 8 (完)


※不定期連載
・泰然自若 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 ......


・forget-me-not 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 (完)


・Higher than the sun 1 2 3 4 5 6 (完)


・永遠と一日 Rui Akira Tsukasa Sojiro Tsukushi永遠の手 (完)


・天高く恋燃ゆる秋 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 12.5R 13 (完)

   <番外編>  秋深き 隣は恋を する人ぞ


・What's … between friends? 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 (完)

   <番外編>  between ourselves 1 2 3 4 5 6 (完)




◆長編

・and evening 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
        21 22 23 24 25 26 (終)
       ・bright golden yellow  ・ultramarine (完)
   
  <番外編> 観覧車



・Viva La Vida 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 (完)

  <特別編> ・This love is two dollars. 1 2 3 4 5 6 7 (完)



・A solar fragment. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 (完)

  <特別編> ・ソメイヨシノ(2012類B.D) 1 2 3 (完)



・little by little 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 (完)

  <aftereffect> ・うたた寝 (2019RuiBD)



・君の恋人 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 (完)


・First crush 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 (完)

  <Extra Edition> First priority 1 2 3 (完)
          (One Big) First Project 1 2 3(完)



◇コラボ
 (類つくサイトマスターさまとのコラボレーション作品)

・Morning Glory 1 2 3 4 5 5.5 6 7 (完)  ・朝顔の花永遠

・木枯らしと陽だまり 1 2 3 4 5 6 7 8 (完)
 <続編> ※ so単独執筆
  ・そよ風と水たまり 1 2 3 (完)





All writing by so.


■ final note












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泰然自若 11 






社内会議直後にメガネに強引に促されて社長室に直行。
牧野の退職手続きを田村に任せたから、メガネが朝からずっと俺に付きっきり。

社長室に入ると、社長と二人、向かい合って応接用のソファに座る。

「来週には私はパリに戻るから、今週末でどうだ?」と、
開口するなりの意味不明な提案と、俺の人生初ぐらいの父のにこやかな笑みにゾッとする。
「......なにをです?」
恐る恐る聞き返せば、微笑のまま、「牧野さん、紹介してくれるのだろ?」と、更に笑みを増す。

「......プロポーズはこれからなんです」
「......は?」

は?じゃないと、
社内の噂に踊らされている社長ってどうなの?と、呆れ返る。

「だから、そんな急に週末に紹介しろとか言われても困ります。 牧野が」
「私の耳にも届くような結婚宣言を社内でして、彼女の退職を催促させて...!」

バンッ!と、目の前のテーブルを叩く。

「プロポーズをしていないだと!?」

握られた拳がわなわなと震えていて、俺の背筋が伸びる。
完全に怒っている。

「指輪がまだなんです!」

婚約指輪か?と、問われ、頷く。
色々と思うところはあったけれど、
デザイナーに直接デザインをオーダーしたのは、前回のミラノ出張時。

「俺も来週、ミラノに行くんで」
今週末に紹介は無理だと伝える。

あ...牧野退職するから、連れて行こうかな......

「とにかく早くしなさい。 お母さんなんて、待ち切れなくて毎日うるさいのだぞ」

知るかよ。





***





メガネに午後からの社外での商談前に昼食を済ませろと急かされて、
お弁当を広げる。

おにぎりをパクリ。

「類様、お食事中、失礼します......」と、
牧野の退職手続きは滞りなく完了したと田村が満面の笑み。

「今日で終り?」
「はい。 午後からは各所に挨拶をし、定時で退職です」
「その挨拶、 田村も付き合ってあげてね」
「承知しております。 お任せ下さい」

牧野が作るお弁当は、俺好みの仕様。
食べやすいサイズの、少し小さめのおにぎりが二つ。
おかずも、大体がワンハンドで一口で食べられるサイズのもの。

いつから?と、聞かれれば、最初からのような気がする。

当然のように食べてきたわけではない。
俺は、愛されているのだと、確かな自信がある。






















「ただいまー」
「おかえり」

もう全てを吹っ切った(諦めた)感のある牧野の笑顔に苦笑してしまう。
いつもなら、早速くっついて「疲れたよー」と、甘えるところだけれど、
今日はその前に、牧野を労う必要がある。

「今日で退職だったね。 お疲れさまでした」と、
そう、花束を渡せば、ドッキリした顔で固まって、
「ありがとう」と、呟くように言って、目をうるうるとさせるから、ギュッと抱きしめる。

「俺もお疲れ様だよ」
「うん。 類は毎日、一番、頑張ってるもんね」
「そう?」
「そうだよー」

ペトリとくっついて、ズルズルと歩く。

ジャケットを脱がせてもらって、ネクタイを緩めてもらって、
シャツのボタンを慣れた手付きで外す牧野に、
「で、その商談の最中に、お茶を運んできたのが娘だとか言って紹介してきたんだよ」と、
カフスを外しながら、今日あった、とんでもない出来事を少し不貞腐れて話す。

「はあ?って、感じだろ?」
「そうなの?」

「......はあ?って、感じだろ?」
「そ、そうだね! 秘書とかじゃないんでしょ? おかしいもんね!」

うむ。と、頷いて、ベルトを外してもらって、靴下をポイポイッと脱ぎ捨てる。

「あ、今日のお弁当のおにぎり、俺の好きなやつだった!」
「でしょー!」

いつから?と、聞かれれば、最初からかも知れない。
お喋りが楽しいなんて。

重いと言われようとも、牧野にくっついたまま、リビングの扉を開けて、
夕食のテーブルにつく前に、お土産のスイーツを手渡せば、また、ドッキリ顔。

「ありがとう。 嬉しい! 買ってきてくれたの?」
「うん」

「類は一番優しいもんね」
「そ?」
「そうだよー。 一番優しくて、一番格好良いもんね!」

大袈裟に褒め称えられて、気分を良くしているなんて、端から見たら異常なことは知っている。
でも、好きな女に、態とらしくでも何でも、褒め称えられるなんて、
気分が良いに決まってるだろ。

今夜も気分良く、テーブルにつけば、
ケーキを見ていたそこから視線を上げて、にこりと微笑んでくる。

「最初から、類が一番優しくて、一番格好良かったよ」
「......そう、なの?」

「うん。 一番最初から、類が一番だよ」

高等部の非常階段で出会ってから、もう10年以上が過ぎて、
あの頃の俺は、こんな未来があることも知らずに、不貞腐れていた。

うふふ...なんて、何故か一人で照れて、キャーなんて、バタバタとキッチンに駆け込んでいく。
その後を追いかけて、背中にペトリとくっついて、
「おいてかないでよー」と、いつも通り甘えてみれば、「うーっ、重いー」と、文句を言われる。

「週明けのミラノ出張、牧野も一緒に行こ」
「えー行かないよー。 類はお仕事でしょ」
「仕事じゃない時間もあるし、一緒に行こうよ。 ミラノデートしよ」

出張ついでの旅行で申し訳ないと謝れば、そういう意味ではないと、
相変わらず遠慮全開で、「類はお仕事に集中して」なんて。

「集中してるよ。 でも、仕事ばかりなんて...俺だってたまには息抜きとか......」
「...っ! そ、そうだよね。 うん、そうだよね。 仕事ばっかりなんて寂しいし疲れちゃうもんね」

「......」

「あっ、あたしも仕事辞めて時間あるから、迷惑じゃなかったら、類の出張に付いて行こうかな」

「うん、付いておいで」
「じゃあ、行っちゃおうかな。あたしもミラノ」

上目使いの牧野にチュッとキスをして、ボンッ /// と、赤くなった頬を突いて、
本当は俺の出張中に寂しいのは牧野の方だって知ってるんだよね、俺。

「あたし、ミラノデート楽しみにしてるね」
「してて」

いつから...と、聞かれれば、一番最初から。

「あ、ね? あたしたちの初デートって憶えてる?」
「ん。 表参道」

何故か、また、キャッ /// として、小さな手のひらで顔を覆うから、
覗き込めば、指の隙間からチラリと俺を見る。

「あたしたちのって言うか、あたしの初デートでもあったんだよ」
「俺もだよ」

「そっか...そうだよね。 あたしたち初デートを初めて同士でしたんだね」

いつから、と、聞かれれば、一番最初から。

「初尽くしだったなあ~」
「そう?」
「そうだよー。 だって、初デートは初恋の人とだもん /// 」

そう、一番最初から、
俺は、愛されていると、自信があったんだ。










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motion blue 






「期待してください」

意を決したあたしの言葉の数秒後。

「それは、俺を好きになって、俺と付き合うってことになるんだけど......」

これまでの、あたしの無意識とはいえ...その、類の言う「仕打ち」によるものなのか、
何故か「期待」に関して疑り深い類が、ジロリとあたしを睨みながら様子をうかがってくる。

自分自身の過ちに多少打ちのめされながら、それでも、今夜ここで伝えなければと思うのは、
あたしは過去の恋の呪縛から、大切なものを失ってしまう恐ろしさを知ったから。

「もう、好きです」

はっきりと、まっすぐに。
伝わって欲しいと思う。

そして、そう言ってしまえば、そうだったのだと納得する自分がいて、
ずっと前から、それが正解だったのに、
知らないふりでこれは間違いだと言い聞かせていたのだと思う。

あたしの告白にも、ギュッと口を噤んだ類を見て、あたしは、いつだって、
真っ直ぐに届けられていた類の想いを踏みにじって来たのだと改めて痛感して落ち込む。

ずっと自分は酷い言葉で、類の気持ちと向き合おうとしてこなかったのに、
類には自分の気持ちが届いて欲しいと願うなんて、
あたしという女はいつから、いい女気取りで調子に乗っていたのか。

また、恥かしさが込み上げて来て、俯いてしまう。

「......ほんとうに?」

まだまだ疑り深い類が、あたしの表情を覗き込むみたいに、首を傾げる。

「ほんとうだ」と、頷くあたしをジッと見つめて、
「まあ、嘘でも構わない」と、さらりと言ってのける。

「嘘でも好きって言われて嬉しいぐらい、俺は牧野が好きだからね」
「うっ、嘘じゃないから! /// 」

「だったら、尚更嬉しい」

ようやく口元を綻ばせた類に、ホッとするものの、
「俺のこと、本当に男として見れる?」と、瞬時に真顔で問われて、また背筋が伸びる。

見れるし、見えていると首を振って応えるあたしを、
頬杖をついたまま、何故か考えるような仕草で。

「できる?」
「え?」

「だから、俺と、できる?」
「な、なにを...?」

「ナニ、を」



........................。



顔が熱い。
そっと頷くだけで肯定の意を伝え、そのまま俯く。

無言の時が居た堪れなく、チラリと視線だけを上げれば、
正面の類とバッチリと目が合う。
相変わらず頬杖をついたままの類の表情からは、何も伺い知ることは出来なくて、
段々と不安になってくる。


「じゃあ、スル?」
「えっ、いっ、今から!? /// 」

「うん。 いい?」
「やっ、あのっ、き、きききょうは、そのっ....... /// 」

幾ら何でも急展開過ぎると仰天するあたしとは対照的に、落ち着きを払った類は、
「ホテル行く? え? なに? 今夜は無理ってこと? じゃあ、いつならいいの?」と、
矢継ぎ早に聞いてくる。

「だだだって、さっき、ようやく自覚したところでっ...! /// 」

絶対に無いと心に決めていたはずの、類との恋愛。
そこに手を伸ばしたのは、ほんの少し前で、
もちろん、覚悟の上で手を伸ばしたのだけれど、その覚悟は、こういったことでは無かったのだ。

もっと、こう、精神的なところでの話であって、
恋愛の始まりの覚悟として期待に応えるために、それをするということでは無かったのだ。

パニックのままそれを言葉にしながら、ベラベラと捲し立てるあたしを、
類は顔色一つ変えずに見つめていて、あたしの冷汗は止まらない。

何も類と関係を持つのが嫌とかでは無くて、
あたしだって何も知らないわけでは無くて、経験が無いだけで。


「経験ないの?」
「ないよ。知ってるでしょ!」
「や、さすがに、そこまでは俺だって知らないから」
「あたし、ずっと彼氏いなかったじゃない」
「司としたのかなって思ってた」
「しっ、してないよっ /// 」


えっ、まって。
類は?
類はどうなの?

彼女がいたことなんてあったっけ?

あっ、静さん!


「そんなの大昔の話だろ」
「でも、静さんとはしたんだ」
「は? なんだよ?」
「なんか、やだな」
「......」


やだな。
知ってる人と、しかも、あんな完璧ウーマンと経験があるなんて......


「してないから」と、溜息の後の類の声は小さい。
多分、嘘のような気がして睨んでみる。


それ以前に、そもそも、類は、
彼女がいない=経験が無いって訳ではないよね。

あたしのこと、ずっと好きだったとか言われたことあるけれど、
だからって、経験が無いなんてことある?
無いよね。

彼女がいなかったってだけでさ。

なんだ。
あたしのこと好き好き言ってたのに、そうなんだ。


「してないって」

少し怒ったような声が聴こえてハッとすれば、
あたしを睨む類が、困ったように髪をかき上げながら頭を抱える。



「あたし、類のこと好きだよ。
 これから、ちゃんと向き合っていきたいと思ってる」

チラリとあたしを見た類が、大きく息を吐いて座り直す。

「だけど、すぐそういう関係になるのは、もう少し待って。
 なんか、今は、まだ、それについてはモヤモヤするから」

「俺は、今夜このまま牧野を帰す方がモヤモヤするんだけど」

ジロリと睨んでくる類の口元は僅かに歪んでいる。

「あたしが類を好きって言ったら、すぐしたいって、なんかやだよ。
 それが目的だったみたいだし、それをしたら、用なしポイ捨てとかやだもん」

そういう話、よく聞くもんね。
あたしだって、そんなことも知らない程子供なわけでは無いのよ。

「ここまで、ずっと何年も好きでいて、1回そうなったからって、終わるわけないだろ!」
「そんなの、信用できないよ」

そもそも、その好きだって、好きの時間の中で、他の女の人とそういうことしてたわけでしょ。

「ほんと、マジ、牧野って面倒だよな。
 自分の事は棚に上げて、俺には潔癖を求めるんだから」

「あたしがいつ自分の事を棚に上げたって言うのよ!
 だいたい、そんな面倒な女なら、別に無理して付き合ってくれなくても結構です!」

「自分は俺の友達と付き合ってキスしたりしてたくせに、
 俺のことばっかり責めるのおかしくない?」

「責めてないし! 今はまだモヤモヤするって言っただけでしょ!
 それに道明寺とのことで類に文句言われる筋合い無いよ。
 あたしの学生時代の大切な思い出だし!」

「なんだそれ。大切な思い出って。ふざけんなよ」
「ふざけてないわよ。 あたしの青春だもん」
「は? あんなに嫌な思いして泣いてばかりいたのに、何が青春だよ!」
「泣いてばかりじゃないもん。 楽しい事も嬉しい事もあったんだから!」
「普段が辛過ぎて、ほんの些細な事が楽しくて嬉しかっただけだろ! 感覚がマヒってんだよ!」
「あたしが、それで満足だったって言うんだから、別にいいでしょ!」
「満足ってなんだよ? あ、牧野、やっぱ、まだ司のこと好きなんだろ」
「だったら何よ!?」
「そうなのかよ?」
「だから、そうだったら、どーなるのよ!?」
「......」


カッとなって、ヒートアップしていたら、
急に類が無言になって、思いっきり口元を歪ませて、ギロリと睨んでくる。

「な、なによ!?」
あとに引けなくて、負けじと睨み返してみるけれど、
道明寺のことなんて、今更これっぼっちも何とも思っていないし、
思い返しても幸せだった恋の記憶とは程遠いのだけれど、
何となく応戦するみたいに言ってしまって、さすがに言い過ぎたと後悔が押し寄せてくる。


「牧野が今でも司が好きでも、俺は牧野が好きだから、付き合ってくれるなら付き合いたい」

「え......」

予想していなかった類の言葉に固まる。

「いつか、本当に俺を好きになってくれたら嬉しいけど、
 好きになってくれなくても良いとさえ思っている」

「は...? 何を......」

「言ったろ? 嘘でも好きって言われたら嬉しいんだって」

余りのことに呆然とするあたしに、
道明寺との思い出を大切だと言われて、嫉妬してしまったのだと、
だから、悪かった。なんて、悪いのはあたしの方なのに、
今日もあたしは類の気持ちを利用している嫌な女みたいだ。

「類は悪くないよ。 ごめんなさい。 あたしがバカみたいなこと言い過ぎました。
 道明寺のこと1ミリも恋愛感情無いです」

「......」

「嘘じゃなくて、本当に類が好きです。
 今更、信じられないかもしれないけど、嘘みたいに類が好きです」

認めてしまえば、溢れ出した感情は、ただ、類が好きというだけで、
ずっとずっと、目を伏せて耳を塞ぐように、封印していたもの。

「なので、あたしは、類の過去の恋や女性関係に嫉妬しました」

あたしの知らない類について嫉妬したのだ。
知っている気になっていただけの自分もショックだったのだ。

「俺も性急過ぎたから...ごめん...それは、俺の嫉妬だな。
 早くそうなって、不安を払拭したかったんだ」

好きだと言われても、これまでの経緯もあるから、
どうしても性急になってしまったと、
あたしの過去ヘの嫉妬も重なって、
早く自分のものにしたかったなんて、少女漫画みたいなセリフにクラリとする。

「今日は俺としても急展開なんだけど......」
「うん...そうだね」

西門さんに類に彼女が出来たと聞いて、とにかく居ても立ってもいられなくなって、
何をどうするつもりも無かったのに、慌てて類を呼び出した。

ここで類と会ったほんの少し前のあたしは、まだ自覚していなかった。
この封印を解いていなかったのに、今は、まっすぐに向き合って、届いて欲しいと願っている。

「これからよろしくね」

急に改まって挨拶をされて、首を傾げるあたしに、
「俺たち、今日から付き合うんだよね?」と、少し不安そうな類の声。

「あ、そうだね。 こちらこそ、よろしくお願いします」

ようやく肩を落として向き合う。
にこりと微笑む類に釣られて、頬が綻ぶ。

期待と不安と、ほんの少しの嫉妬と。
過ぎ去った幼い恋と、隠していた感情と、見ようとしなかった明日の愛と。


「やっぱ、今日、帰したくないな」と、揶揄い口調の類は、
クスクスしながら、ワインを流し込む。

「......じゃあ、どっか泊まってく? /// 」

意外なあたしの一言に、固まる類は、
あたしの期待通りで、不安なんて吹き飛ばしてしまうから、
こんな類を知っているのは、きっとあたしだけだと、些細な嫉妬は灰になってしまう。

振り返っていたのは、あの恋では無くて、この恋だったのだと知る。

「......うん」

小さく頷くだけの類に、初めて恋に落ちた日から、
ようやく、重なった想いに、感動さえ覚える。

「うん...... /// 」

綻ぶ口元と、少し赤い頬は、踊り出した感情のせい。

あたしは、今夜、覗き込んでいただけの恋に飛び込んだのだ。










Fin.












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out of the blue 






それは何故か想像もしていなかったこと。
ただ、ただ、驚いたのとの同じぐらいに、衝撃を受けた。

花沢類に恋人が出来たのだ。

今、こうして、考えてみれば、想像さえしていなかった自分がどうかしているのだ。
彼は超お金持ちの家の一人息子で、ルックスも良く博識、身体能力も高い。
将来が約束されている、言うなればスーパーエリートなのだから、
今まで、恋人がいなかったこと自体がミステリーであるのに、
あたしは、どうしてか、この衝撃の事実を知った今日の今まで、ただの一度も、
花沢類という男が恋をしたり、恋人とデートをするということを、想定した事が無かったのだ。

「驚く気持ちもわかるけどよ、類もそろそろ...な、年頃だからな」

その事実を知らせてくれたのは西門さんである。
彼と美作さんの場合、今まで特定の恋人がいないからと言って、
彼等に恋人が出来たとして、あたしは、ここまで衝撃を受けなかっただろう。
二人の場合、それが本気でも、万が一、ビジネスライクなものでも、
どちらにしろ、ありえない話では無かったからだ。

つまり、あたしは、花沢類の恋愛とか恋人と言う存在について、
ありえないものだと思っていたのかもしれない。

「花沢のパリ支社勤務だってよ。 遠距離恋愛だと」と、西門さんは笑う。

類の彼女になった女性は、フランス人女性らしい。
二人は類の入社をきっかけに知り合い、意気投合したとのこと。
日本とフランスを行ったり来たりしている類の秘書と言うより、
パリでは田村さんの代わりに類の右腕的存在で、
バリバリ働いているけれど、歴史あるフランスの食品メーカーのお嬢さんだそう。

「やっぱ自立した女が好きなんだな、アイツ...」
独り言のような呟きの後に、「お前はどうなんだ?」と、スッと視線を投げられる。

「......えっ...と......何が?」
言わんとしていることは解るけれど、一応、とぼけてみる。

「誰かいねーのか? なんなら紹介するぞ」
「いや、いい。 あんたたちからの紹介だけは絶対に嫌なの」
「なんだ、それ」

愉快そうに笑う西門さんを前に、あたしは脳内で首を傾げる。

おかしい。

あたしは類に幸せになって欲しいと願っていたはずだ。
いつかまた恋をして、その人とうまくいけばいいって、
愛する人を見つけて欲しいと、心から願っていたはずだ。

心から?
願っていた?

「なんだよ? お前、納得いかない顔して」

首を捻って気難しい顔をしていたらしいあたしを、西門さんが訝し気に見つめる。


納得がいかないのは自分自身にだ。

幸せになって欲しいと願っていたはずなのに、
喜べない自分自身がおかしい。

そもそも、果たして、あたしは本当に、
花沢類と言う男の幸せを、恋を、心から願っていたのだろうか?
それすらも、自信がなくなっている。


「寂しい............」


一言。
そう、口の端からポロンと漏れ落ちて、
西門さんが困った表情をする。


「どうしても類とは付き合えないって振ったのはお前だろ」
「......」

類とだけは付き合えなかった。
どうしても。

だって、道明寺とうまくいかなかったから、花沢類なんて、
絶対にダメだと思ったの。

あたしの気持ちに整理がついて、いつか追い付くまで待ってると言ってくれた類に、
「いつまで待っても類を好きになる事は無い」って、
「友達以上に想う事は無いから」って、
割としつこく告白をされたのに、断り続けたのはあたしなのだ。

「寂しくても悲しくても、お前が選んだのは類じゃないんだから、
 類がお前じゃない誰かを恋人にするのは当然で、
 お前よりも大事にする女が出来るのは不思議な事でも何でもない」

少し厳しい口調で言い切られて、確かにそれは真実であると頷くより無い。

でも......?

あれ......?

類があたし以外の女の人とお喋りしたり、笑い合ったり......出来るの?
一緒に歩いたり、ご飯を食べたり、あたし以外の女の人を揶揄って遊んだり......出来るの?


「類は、その人の事、本当に好きなのかな? 楽しくデートとか出来るのかな?」
「それ、お前に関係ある?」

「......あたし、類に聞いてみる」
「何を?」
「彼女のこととか類の気持ちとか......」
「......」






















「久しぶりだな。 元気そうで安心した」

あたしの急な呼び出しにも応じてくれた類は、穏やかに微笑んで、
「食事をしよう」と、あたしをレストランへエスコート。


おかしくない?
彼女がいるのに、他の女(友達)と二人で食事って......いいの?


「類、彼女出来たってほんと?」

単刀直入なあたしの問いに、「あ、総二郎だな」と、類は恥かしそうに笑う。

「彼女いるのに、あたしと二人で食事とかダメじゃない?」
「なんでさ?」
「デートとか誤解されるかもしれないし、何より彼女がショック受けるんじゃない?」

女心に疎いところがある類だから、そういうの、余り分からないのかもしれない。
「ちゃんと彼女に言ってきた? 女だけど友達だって」と、問い掛けるけれど、
あたしの話を聞いているのかいないのか、メニューブックから顔を上げない。

「牧野は? 司に言ってから来てた?」
「え......?」
「男だけど、友達で、あんたの幼馴染だから心配しないでって」

そんなことは、いちいち道明寺に報告した事は無かった。
それは道明寺は多忙だとか、時差があるとか、色々と理由はあったけれど。

「牧野はずっと司と付き合ってたけど、俺と二人で食事なんて何度もしてただろ」
「それは、そうだけど......」

「牧野の理論から言えば、司はショック受けてたんじゃないの?」

ジッと見つめてくる類の瞳は怒っていて、あたしの肩が小さく揺れる。
類が怒ることは稀だからだ。

「る、類は、彼女のこと、本気で好きなの?」
「なんだよ?」

「だから、類は本当に恋に落ちたの?ってことだよ」
「......それは、まだかもしんないけど、牧野には関係ないよね?」

「まだなの!?」
「なんで、そっちに反応すんだよ?」

呆れたと言わんばかりの溜息をついて、
「はい、乾杯」と、シャンパングラスを軽く持ち上げる。

「俺の恋人のことなんてどーでもいーよ。 腹減ってんだろ。食べな」
「どうでも良くないよ!」
「なんで?」
「気になる、から......」

非常に、気になるのだ。
もう、心が、ずっと、ざわざわしているのだ。

「気にすんなよ」

フンッとした正面の類は、珍しくイライラした感じで、ジロリとあたしを睨む。

「牧野は、自分と似たような価値観の似たような育ちの一般的な男と一般的な結婚するんだろ。
 俺の恋愛に首突っ込んでる場合じゃないだろ」

「だって、類がちゃんと女の人と付き合えるのか心配で.......」

はあ!?と、いった猛烈な呆れた表情の類は、
「失礼なやつだな」と、ムッとして、「俺のことより自分のことを心配しろ」と、溜息を落とす。

「あたしは別に好きな人とかいないし」
「いつになったら出来るんだよ? 司と別れてもう何年も経つのに」

「あたしは、恋に落ちてもいないのに付き合ったりしないの!」
「なに? 俺を責めてるの?」
「そうじゃないけど」
「...あのさ、俺、牧野に何度も告白したよね? 忘れた?」

ろくに考えもせずにいつも鼻から断って、
しまいには「好きになることはないから」と、「早くいい人見つけなよ」と、
そう言ったのは牧野だろと言われて、言葉に詰まる。

「あたしは、ただ、好きでもない人と付き合うのはどうかと思うって話で...」
「好きな女は付き合ってくれないんだから、
 自分を好きだと言ってくれる人と付き合った方が良いだろ?」

御尤もだと思い何も言い返せなくなるけれど、
それで本当に、この男は、花沢類は幸せなのだろうかと首を捻る。

「牧野もさ、いつまでも過去の恋に縛られてないで前を向きなよ」
「......」
「逃げてばかりじゃ、振り返った時に何も残ってないよ」

正面の類は、いつものように穏やかな声音で、
まるで、あたしを諭すかのように微笑む。

......あれ?

「逃げてきても、もう、あたしを迎えに来てくれる人はいないってこと!?」

思わず口から出た言葉は、あたしの胸の奥からボコンッと飛び出たみたいで、
それを言葉にしたことで、自分自身がその事実に驚愕をする。

キュッと口を噤んだ類の真っ直ぐな視線が逸らせない。
あたしは何を言っているのか。

あたしは花沢類をあたしのなんだと思っているのか。


そうか......


「待っててくれる人もいなくなっちゃったってことか......」


突発的に理解した。
理解すると同時に、寂しさの意味も納得した。

あたしは花沢類を、あたしのものだと思っていたのだ。

「......ごめんね、類...。 今までずっと、類をあたしの所有物みたいに......」

もちろん、そんなつもりは無かったけれど、
結果的に、あたしは、いつも、いつだって、類を逃げ場所にしていた。
それは自分自身の弱さや甘え。
あたしは、類をまるで共犯者のようにしていたのだ。


「待っててほしい?」


自己嫌悪に陥るあたしの前に落とされた言葉に顔を上げると、
やはり真っ直ぐにあたしを見つめている類。

待っててほしい。
それは、そうだ。

そう、瞬時に思ったけれど、何とか声には出さなかった。

「あたし、なんだか不安になっちゃって......」

バツが悪いような笑みを浮かべて話すあたしに、類は黙ったまま耳を傾ける。

「類に彼女が出来たって聞いて、何かちょっと動揺しちゃって...」

不安定になった時に、もう、あたしの前に差し出される手は無いのだと、
突きつけられてしまった感があったのだ。

「牧野は、俺とだけは絶対に付き合わないんだよな?」
「............」

「俺以外のどこかの誰かと恋に落ちるんだろ?」
「............」

おかしい。
何故、即答できないのか。

心のざわざわが気持ち悪い。

「俺に彼女が出来て嫉妬した?」

嫉妬......?

それだ。

あたし、類の彼女に嫉妬しているんだ。

この手はあたしにだけ差し伸べられる手だったのに...って......。

「そうみたい......ごめんね......」
「謝らなくていい」

素直に認めた嫉妬の感情が、ざわざわとしていた心の中で、
こんな時に踊り出すみたいに揺れ始めて、苦しくなってくる。

「牧野って面倒なんだよな」

溜息を落とした類が、またまたあたしを呆れ顔で見つめて、
自分の気持ちと向き合わなければ納得が出来ないと言う面倒な性分なのに、
自分の気持ちに素直になれないから、常にややこしいし、
気付いた時には失った後タイプの典型なのだと言う。

確かに、これまでにも、自分の理解を超える状況への対応には時間が掛かった。
すぐそばにあるご馳走のような幸せにも躊躇したのは、
あたしはあたしだ。と、言う、自意識と自己肯定感なのかもしれない。

「俺は待てるよ」

ハッと顔を上げれば、やっぱり溜息交じりの呆れた表情の類と目が合う。

待てると、待っていると何度も誠意を見せたのに、
その誠意を踏みにじって来たのが、あたしなのだと言われて、
「ごめんなさい」と、俯くより無い。

「俺は、どうしたって牧野のことが好きだから、
 こんな仕打ちの後でも待ってて欲しいって言われたら待ってるんだよ」

後先考えずに飛び出して、素直じゃない頑固なあたしが、
結局は逃げ帰って来ることが出来ていたのには、
いつだって、どんなあたしでも待っててくれる類がいたからなのだ。

「幼馴染にはバカだって言われてんだ。
 いつまでも振り向かない女に都合の良い男友達にされてるって」

西門さんと美作さんの顔が浮かんで、項垂れるあたしは、
それを真っ向から否定できない事実に気付いたからである。

「それでも良かったけど、俺も、いずれは結婚だってしなくちゃなんないんだよ」

わかるよね?と、見つめられて、「うん」と頷くあたし。

あたしを見つめる瞳は、いつもあたしの嘘も真実も吸い込んでしまいそうなほどの透明感で、
思わず見とれてしまうのは毎度のことだけど、
今夜ばかりは恥かしさに視線を逸らすことも出来ない。

「牧野に利用されるのなんて、全然構わないんだよ。
 俺しかいないから...牧野が弱音を吐いたり頼れるのって......」

だから、利用されているなんて思ったことなど無かったのだと、
友人たちに諭されても、どうしても放っておけなかったのだと、
そんな風に真っ直ぐに伝えられるのは、きっと初めてじゃないのに、
初めてのような気持ちで、あたしは、その言葉の一つ一つを、多分、初めて受け止めたのだと思う。

「ごめんね、類。
 類に彼女が出来た途端に、まるで惜しくなったみたいに、こんな態度とって......」

「謝らないで。 その代わり、責任取ってよ」

責任?と、首を傾げるあたしに、
「今、牧野は、俺にすげー期待もたせてるよ」と、見つめられて、
惜しくなって、告白みたいな態度で、何てあたしは自惚れた女なのだろうかと恥かしくなってくる。

「彼女なんていないから......」

その呟きのような小さな声も、真っ直ぐにあたしに飛んできて、
耳を疑うようなあたしに、「まだ、いないんだよ......」と、しっかりと届けられる。

あたしが聞いたフランス人女性を彼女にしようと思ったのは事実で、
そうなろうと思っていた矢先なのだと、類は溜息まじりに話し始める。

「あきらと総二郎に、いつまでも女々しいとか言われて、ムカついてたし、
 俺もいい加減に前へ進むべきだと思ったんだ」

しつこいと嫌われる前に身を引くべきだと考えを改めたところだったのにと、
チラリとあたしを見て、また、溜息。

「もう、友達のままではいられないよ。
 このまま俺を繋ぎ止めていたいなら、牧野もそれなりの覚悟をしてよ」

そうすれば、待てるのだと、
期待を胸に待たせて欲しいのだと。

「期待してもいい?」

戸惑うように揺れる色素の薄い瞳からは、僅かに期待の色が見えて、
「......うん」と、頷くあたしを直視した後に、目を伏せる。

「本当に期待するけどいいの?」

まさかの念押しに、驚いてしまうのと同時に、
期待していたのは、本当はいつだって、あたしの方だったと気付く。

どこにもいかない、
あたしのそばにいる、
あたしのことが好きな花沢類。

バカな自惚れ女だった自分を恥じて、
背筋を伸ばして、類と向き合う。


「期待してください」


意を決して伝える想いは、初めて真っ直ぐに類に飛んだ気がして、
溢れ出てくる感情に少し戸惑うのは、声に少し涙が混じってしまったから。


期待して欲しい。
ただ、期待して、待たないで欲しい。

だって、あたしは、もう、すぐそばにいて、
待たせる気なんて無いのだから。


きっと、ほんとうは、
待っていたのも、あたしなのだから。










Fin.










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