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花より男子 二次創作小説 CP 類×つくし

 

(One Big) First Project 2 

Chapter : 2





笠原太郎
食品流通事業部 営業第一課 酒類担当

花沢物産では数年前に採用した新入社員のほとんどが、
右へ倣え状態で、意志や意見も無く、非常に大人しい若者ばかりだった時があります。
そういった時代に生まれ...と、言うのも、あるのでしょうが、
優秀とはいえ、競争心も無く、指示された事だけを淡々としているようでは......と、
上層部は危惧し、翌年、これまでの採用条件から、
とにかく積極性のある若者を採用という方針に切り替え。
少々、成績は低くても...と。
おかげで、その年の新入社員は、
ポジティブ思考のリーダー性の強い者が多く入社致しました。

通常、我社では新入社員が子会社に出向することはまずありません。

その中で異例とも言うべき、新卒即出向配属となったのが、笠原太郎です。
つまり、彼は、ポジティブ集団の中でも、極めてメンタルの強い者として抜擢されたのです。

この時点で分かる通り、彼は、我々では理解できない程のポジティブ思想、
メンタルの強さ、空気の読めなさを備えていたのです。

つくし様と面識を持ってしまったぐらい、当初は全く気にしておりませんでした。
しかし...私も田村部長も、そのメンタルの強さを理解していなかったのです。
否、到底、理解できるような強さでは無かったのです。


「あの年の採用ですね...。
 しかも新卒即出向とは、通常、退職のリスクが高いので考えられませんよ」

調査により判明した事実に、田村部長は顔を引き攣らせ、
大きく溜息を落とされました。

類様自らが、つくし様は自分の婚約者であると、はっきりと睨みをきかせても、
彼はそんなことは全く気にも留めず、平気でつくし様に近付き、平気で誘っていた模様。
それを聞いた時には、そんなタイプの人間、本当にいるのだな...と、驚愕しました。


最終的には、類様と田村部長による、口頭注意。
無論、彼の上司にあたる役職者を呼び出し、田村部長が怒りの口頭注意。


これで、もう大人しくなるであろうと、
つくし様も秘書課に配属されたことで、田村部長も安心していたようですが......。


『 私、以前、花沢部長の奥様と同課で働いておりまして... 』
『 研修時ですね。 そういった方は他にも大勢います... 』

『 いえ。 それだけではなく、実は以前出向していた子会社で、
 まだ結婚される前の奥様がアルバイトされている時の... 』
『 奥様のアルバイト事情も把握しておりますが、
 特別親しくされている方はいなかったと聞いております 』


恐ろしい、と、思いました。

何の接点も無い重役秘書室に、平気で内線をしてきたかと思えば、
自分の勤める会社の次期後継者の奥様と知り合いだと、会わせろと言ってきているのです。

しかも、至極当然のように。
なんなら、これから、上へ行きますと、秘書室まで来ると言う勢い。


『 奥様からは子会社でのアルバイト時代、ここでの研修期間にも、
 親しくされていた者は一人もいないと聞いております 』

『 そうですか。 そういった立場の方ですから、そうでしょうね 』 と、笑う。
何度も顔を合わせて仕事もしているのだと、プライベートな話題もしたことあるんですよと、
ただ、挨拶をしたいだけだと、お祝いを述べたいだけだと。

『 お願いしますよ~ 』 と、何の接点も無い私に、この感じ。

ホラーだと思いました。

『 お断りします。
 君、自分の立場を自覚しなさい。
 非常に迷惑。
 頭、おかしいとしか思えませんね。
 上司には私から伝えておきますので、カウンセリングを受けて、暫く休職してください。
 そして、二度と、花沢部長にも奥様にも近付くことは許しません。
 内線もこれっきりです。二度と、しないように 』


入社以来、初めてのガチャ切り。
恐怖のあまり、早口でまくし立ててしまいました。





***





「桐ケ谷こそ、子供作んないの?」

セクハラだパワハラだと、私を睨んでいた類様も、執務室に入られると、
急にトーンを落として聞いてくる。

「はい。これからパリに行きますし...暮らしに慣れ余裕が出来た頃にと、二人で話はしております」

海外赴任は、2年前に通達されておりました。
つくし様が大学卒業のタイミングでと。

「俺もそう考えている」と、類様は言う。

「あのさ...頻度はどれぐらいなの?」
「......はい?」

「だから、その、頻度。 週4とか5? 毎日?」
「............それは............週2...3......程度で...しょうか......」

まさか、上司に夫婦生活の頻度を聞かれる日がこようとは、
全くの想定外のところからぶっ放された気分です。
それこそ、夫婦生活は最重要プライバシーなのでは!?と、思わず顔が引き攣る。

「そっか」と、類様は、どこかホッとされているご様子で、
自分よりも年上の30代の私が週3なのであれば、自分たちは全くおかしくないと、
普通だったと、にこやかにタブレットを操作して、承認作業。


ふと思う。
類様は牧野様が初めての恋人。
牧野様は、その...類様が初めて......と、聞いておりますし、
つまり、二人は、初めて同士で結婚をし......。


「そう言えば、あの映画も、ヒロインと結ばれた男はヒロインが初恋の相手、
 ファーストキスの相手でしたね。
 最後には身を引いたヒロインの幼馴染は、別の女性と付き合ったりしていましたね」

「......」


ヒロインを忘れるために、別の女性と交際、一足早く大人の階段を上ったものの、
長続きしなかった、あの2番手男を思うと、多少、不憫さを感じるものの、
もしかすると、あれが運命の分かれ道だったのかもしれませんねと言えば、
俯いてタブレットを見つめたままの類様は微動だにせず。


「一人の女性を最初から最後まで......え...? 類様?」


何故か、恐ろしい顔で私を睨んでいる類様に戦慄。


「......仕方ないだろ!」
「え...あの......」

「あの女が付き合えって仲を取り持ったんだぞ!」


確かに、ヒロインの幼馴染男は、ヒロインの友人をヒロインによって紹介され、
のらりくらりと交わすものの、「男ならビシッとキメなさいよ!」なんて、尻を叩かれて......。


「そ、そうですね。 ヒロインがけしかけたんですよね」


初めて見る類様の不機嫌とは違う怒りの形相にたじろぐ。
何故に、急に、こんなにも...?と、思うものの、余りの恐ろしさに、そそくさと退室。


今日は恐怖体験の連続だと、疲労を感じる。


秘書室に戻り、パリでの披露宴後、お二人は新婚旅行に向かわれると、
その間に渡仏の準備を...と、田村部長に報告。

「どうしました? 顔色が悪いですね?」
「いえ......」

「何かありました?」と、不安そうに田村部長が、類様が何か...と、聞いてくる。
しかし、どう話して良いものか...
否、それ以前に何故なあんなにも怒ったのかが不明なのであります。

「映画の話なんですが......」と、切り出せば、
「映画?」と、田村部長は首を傾げるものの続けるように促してくる。

「その、ヒロインをずっと好きだった男が、別の女性と付き合ったりしたものですから」と、
「結局、最終的にはヒロインは、
 もう一人の自分を最初から最後まで強く想ってくれた男とですね......」と、
かいつまんであらすじを話せば、田村部長は苦笑。


「類様最大の黒歴史があるんですよ」と、田村部長はハハハと可笑しそうに笑い、
「気にする必要はない」と、「ただ、余り2番手男の話はしない方が良い」と。


類様最大の黒歴史を考えてみるも、全く想像がつかない。
世の男が欲しがる要素を全て兼ね備えているような類様にも黒歴史などあるのかと、
俄には信じられない気持ち。






















「ドレスの胸元から、やっぱり...こう......」

いつものように聴こえてきたつくし様の声。
聴こえないふりで仕事を進めるのですが、「胸元!?」と、思わず振り向く。

デスクに座ったまま、ご自分の胸に両手を当てて思案顔。
思わず、顔を逸らす。

見てはいけないものです。

「やっぱ、パットかな...あのドレス着るなら......」
「うーん......寄せて上げれば大丈夫とは言われたけど......」


どう考えても、胸についての独り言に、
今日は私の方がバサバサと書類をあちこちに飛び散らかせながら、
何かを探しているフリでもしたい衝動。

「はあ......」

一際大きな溜め息が聞こえ、そっと振り向けば、今度は頭を抱えているつくし様。

類様がつくし様の胸の 小ささ 大きさを気にされている事は全くありません。
そんな 小さな 些細なこと、全く微塵も類様の中には無いものと思われます。

つくし様とお付き合いをしたいのであれば!を、切り札のように、
田村部長に「人間関係とは!」とか、「人付き合いとは!」とか、
取引先だけではなく社内での会議での態度だとか、表情だとか、
仕事への取り組み方、姿勢とか、上に立つ者としての振る舞いだとか、
言葉一つ一つまで、毎日ダメ出しをされ、露骨に嫌な表情をしながらも、
類様が一つ一つそれをクリアーして行ったのは、
ただ一つ、つくし様との今後を見据えてのことでありました。

そんな胸の 小ささ サイズごとき、何とも思われておりません。
むしろ、その 小さな ......、いえ、つまりは、類様にとってはジャストサイズ、
愛おしいものの一つになっていることでしょう。


「つくし様、披露宴でのお召し物ですが......」

バッと顔を上げたつくし様は、仕事中に私事で頭を抱えていたことが罰悪そうに笑いながら、
「な、ななんですか?」と、いつも通りの慌て具合。

「実は、全て、類様がつくし様のために自らデザインされたんですよ」
「...えっ!?」

恥ずかしいから言わないで欲しいと、やや赤面気味の類様に言われた時は、
何と可愛らしい...!と、私の方が赤面しました。

「内緒、なんですけどね。
 妻のドレスをデザインなんてと...照れくさかったのでしょうね」

驚いたつくし様の大きな瞳は、零れ落ちそうで、思わず両手で受け止めそうになるのを堪えながら、
だから、何も心配は不要ですよと告げる。

「ウェディングドレスもそうですよ」

ポカンと口を開けたつくし様は、聞いていたとおり、少々、恋愛ごとに鈍い傾向がお有りです。

つくし様の為だけに、つくし様だけが似合うお召し物としてデザインされたもの。
ジャストサイズで計算されつくされているので、悩みは無用ですねと言えば、
みるみると頬を染めて、恥ずかしそうに俯く。


パットなんていりませんよ。とは、言いません。
胸元から、それが見えないように計算されているのですから。


「類様には内緒ですよ」と、もう一度言えば、
「はい /// 」と、染まった頬と緩んだ口元。


そっとウェディングフォトを手に取り、一気に顔を崩して眺める。
最早、仕事のことは眼中になさそうです。


仕事を進めながら、なんとなく様子をうかがえば、
ふにゃふにゃと顔全体を緩ませて、指輪を見つめたり、写真を眺めたり、
そうして、また、何かを思い出したように、
「ん~~ /// 」とか「あ~~ /// 」とか、顔を覆ったり......。


見ていて飽きないお方です。





***





前途ある若いお二人の披露宴は、あまり政治色を強くしたくないというのが社長のご希望。
花沢物産ともなれば、政財界とは切っても切れない縁も強い。
次期後継者の結婚披露宴は、各業界からの招待客は列挙に足りず。

あえて日本ではなく、今後お二人が赴任されるパリに決定されたのは、そんな社長の意向。


披露宴会場となる古城へも、お二人は揃って下見に行かれました。
ついでに出張を入れた形です。
私が説明をしながらお二人をご案内させて頂いたのですが、
古城を見るなり、「し、城...!」と、つくし様は大口を開けたまま固まりました。

ささっと、いつもの様に、そんなつくし様の口を閉じられた類様は、
「いいね」と、「どう?」と、つくし様に微笑まれ、
お二人は時間の許す限り会場となる城を見て回られました。


「当日は、どうしてもご挨拶回りがメインになってしまいますので、
 開始前にお食事が出来るように、ご用意させていただきます」

「頼むね。 つくし、おなかすいちゃうからさ」

「ちょっ...! あたし、そんなすかないし!」

頬を膨らませたつくし様が、「食べなくていい」と、「すかない」と、
意地になって類様に抗議するのを、類様は穏やかな微笑みで見つめられており、
何とも微笑ましい。

「ご挨拶回りには社長と社長秘書が同行いたしますので...」
「桐ヶ谷と田村は?」
「私と田村部長は、少し下がった場所から...」
「俺、桐ケ谷と田村が良かったな」

「あたしも」

「ね」と、見つめ合う二人に、私の胸は感動に打ち震えました。
ここに田村部長がいたら、泣いていたことは間違いありません。


「とても光栄ではありますが、お二人の披露宴は、私の初めての一大プロジェクトですので...」
「...俺と散々、商談まとめて来たじゃないか」

フンッとした類様。
ああ、このお言葉も態度も、私の胸に感動のさざ波が......!

「もちろん、そうです。
 ただ、今回は、着任早々から手掛けてきたプロジェクトの集大成とでも言いますか...!」

「......!!」

「え? あたしと類の披露宴が...? なんで?」

首を傾げるつくし様と、私を睨む類様。

「いえ...その......お二人のことは、その...常々、応援してきまして......その...!」
「え? 応援? ......プロジェクトって?」

当然ですが、悪意の欠片も無く、更に考え込むような表情のつくし様と、
私を睨む類様の圧が半端ない。

「しゃっ、社長から任された仕事は初めてですのでっ!」
「あ、そうなんですね」

「そうなんです!」

つくし様が、余り深く考えないタイプで良かったと思います。
何とか切り抜けた感に、胸を撫で下ろしますが、類様の目つきの鋭さに背筋が伸びます。

花沢のファーストプライオリティーはトップシークレット。
口を滑らせかけた自分が不甲斐なく、怒りさえ湧いてきます。


「桐ケ谷さんのファーストプロジェクトが、あたしたちの披露宴なんて...何か悪い気がするね」

類様を見上げるつくし様の微笑みに、鋭かった目つきは一瞬にして消え去り、
穏やかな眼差しがつくし様に注がれます。


「あたしのファーストプロジェクトでもあるね」


続けられた言葉に、一瞬、停止。


「だって、あたしが花沢のお仕事にバーンッて関わるのって初めてじゃない?」
「バーンッて......」
「だから、失敗は許されないよね。頑張るっ」

グッと拳を握るつくし様は前のめり気味。
若干たじろぐ類様。


「や、頑張らなくて良いから」
「そんなこと言わない。 気合い入れて頑張るから、ねっ」


更に拳を突き出すつくし様に、困ったような類様も、
次第に口元を緩ませて、つくし様の膨らんでいた鼻をつまむ。


「やめてよ /// 」
「鼻の穴から、虫入りそうだよ」


クスクスと笑いながら、イチャイチャし始めたお二人を確認し、
そっと、その場から離れ、下見の最終チェック。


「一緒にがんばろ?」
「うん。 類は華やかな場所は苦手だもんね」
「つくしがいてくれたら頑張れるからね」
「あたしのセリフだって /// 」


聴こえてくる会話に、少しだけ振り返れば、
天井画の下で、窓から射し込む光が集中するその場所に、
偶然なのか必然なのか、お二人はそこで見つめ合っておられ、
それは、まるで、あの映画のワンシーンのように、キラキラと輝いておりました。





披露宴は、
つくし様のファーストプロジェクトです。












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