The Masterplan - Epilogue -
カテゴリ: The Masterplan / テーマ: 二次創作:小説 / ジャンル: 小説・文学
Epilogue
「見て...類...綺麗な色。キラキラしてる」
丘の上で晴れた空にワイングラスを掲げるつくしはご満悦の表情。
「うん」と返事をしつつ、そのつくしが掲げているグラスにカチンと自分のグラスを当てる。
定期的に足を運んでいたこの農園だけど、昨今は目的が少し変わりつつある。
今までは経営が主であとは俺自身のリフレッシュ。
「うん...おいしい」と頷くつくしに「そう?」と首を傾げる俺。
「なんなら去年の方が良くなかった?」と続ければ、「あたしと類が手を加えたせいだね」とアハハ!と笑う。
こだまするみたいなつくしの笑顔に夢が広がって行く。
数字よりも今はこの空の下でワイン造りと言うか農作業に夢中になっているつくしと一緒にその枝や葉や土に触れている方が楽しい。
今までは全て任せっきりだった。
「やってみたい」と言うつくしに付き合って体験をし始めた俺だけど、つくしが楽しいと笑うから俺も楽しくて笑って......。
風が吹く度に香る土の匂い。
つくしの笑い声と揺れる葡萄の実。
この丘の下で体験した季節は俺に夢をくれた。
「いつか俺がこの仕事を辞めたら一緒にワイナリーを経営しよ」
「うふふ...プロポーズみたい /// 」
もっとプロポーズはこう...大々的と言うか...片膝ついて指輪をパカっとやるもんなんじゃないの?と俺は思うわけで、だから照れているつくしには少し呆れるけれど、「いつか俺が花沢物産から離れても一緒に居てよ」と肩を抱く。
「当たり前でしょ!あたしが花沢のブランド目当てで結婚決めたみたいな...道明寺みたいなこと言わないでよ」
赤く染めた頬を膨らませて、尖らせた小さな唇。
「うん。顔だもんな...アハハ」
趣味のようなリアルシミュレーションのような感覚で始めたワイン作りだけど、今は本当に心からこの丘を、この景色を残して良かったと思う。
夢が出来た。
「いつか二人でワインメーカーになろうよ」
やりたいこともなりたいものも無かった。
決められた人生の道程が当然でそれしかないと信じて疑っていなかった。
「もしも」なんて考えた事も無かった。
つくしが言う人生プランみたいなものは俺にはずっと無かったけれど、この丘の上でつくしと一緒にワインを開けて、その景色を仰ぎ見た時に世界がたちまち広がった気がしたんだ。
「類が引退したら...の話?」
「そ」
「おじいちゃんとおばあちゃんで労働はキツイんじゃない?」
あたしはまだしも俺が農作業なんて身体を使う仕事は今だって無理だろうに、老体では...なんてブツブツと独り言のように顔を引き攣らせるから笑ってしまう。
「そんな年寄りになるまで俺に働かせる気?」
「え? だって大企業の社長ってその後は会長になって相談役になって...ほぼほぼ死ぬまでみたいな感じじゃない?」
確かにそんな事はあるのだけれど、ほぼほぼ死ぬまで...とかつくしの物言いは相変わらず面白い。
「俺は早々に引退するよ」
「いいの?」
良いも悪いも無い。
これは俺の......俺とつくしの二人の人生だ。
「世襲に拘りは無いんだ」
実のところ父も自分の後は俺...とは考えていないようなのだ。
「いつかは社長に就任するよ。それが俺の役目だとも俺は理解してる」
父→俺ではなくて、父→誰か→俺みたいな感じになるんじゃないかな?と言えば、年齢的にもそうだよねとつくしは頷く。
「でも花沢専務は我社期待のNO1次期後継者候補だよ? 多分類はすぐに社長になるよ」
「...そうなったらなったで引退時期をもっと早めればいいよ」
「そんなうまくいく?」
「大丈夫。だから、俺たちに子供が出来たとして...何が何でも会社を継がせるって訳じゃないから」
「うん /// 」
子供という単語に頬を赤らめるつくしの黒髪を撫でて、「だから...」と耳元に唇を寄せる。
その手を取ってその場に跪く。
濃紺のベルベットのケースの中にはエタニティリング。
俺が想像していたプロポーズってこういうのだよ。
見上げるのは宝石みたいに輝いている黒い瞳。
「愛してるよ。結婚しようよ」
眼下に広がる葡萄畑。
陽の光を浴びた黒髪が風に舞う。
「はい /// 」
いつか、この丘の上で最高のワインで乾杯しようよ。
どうしようもなく愛しているから。
親愛も純愛も全ての愛はここにある。
遠くからやってきた初恋は夢も希望も連れて来た。
運命の女神が靡かせる黒髪にキスを落とす。
これから先の未来は知りようも無いけれど、
いいものが出来ても出来なくても良いんだ。
ただ、いつだって誇らしくこの言葉を贈るよ。
「愛してる」って。
Fin.
「見て...類...綺麗な色。キラキラしてる」
丘の上で晴れた空にワイングラスを掲げるつくしはご満悦の表情。
「うん」と返事をしつつ、そのつくしが掲げているグラスにカチンと自分のグラスを当てる。
定期的に足を運んでいたこの農園だけど、昨今は目的が少し変わりつつある。
今までは経営が主であとは俺自身のリフレッシュ。
「うん...おいしい」と頷くつくしに「そう?」と首を傾げる俺。
「なんなら去年の方が良くなかった?」と続ければ、「あたしと類が手を加えたせいだね」とアハハ!と笑う。
こだまするみたいなつくしの笑顔に夢が広がって行く。
数字よりも今はこの空の下でワイン造りと言うか農作業に夢中になっているつくしと一緒にその枝や葉や土に触れている方が楽しい。
今までは全て任せっきりだった。
「やってみたい」と言うつくしに付き合って体験をし始めた俺だけど、つくしが楽しいと笑うから俺も楽しくて笑って......。
風が吹く度に香る土の匂い。
つくしの笑い声と揺れる葡萄の実。
この丘の下で体験した季節は俺に夢をくれた。
「いつか俺がこの仕事を辞めたら一緒にワイナリーを経営しよ」
「うふふ...プロポーズみたい /// 」
もっとプロポーズはこう...大々的と言うか...片膝ついて指輪をパカっとやるもんなんじゃないの?と俺は思うわけで、だから照れているつくしには少し呆れるけれど、「いつか俺が花沢物産から離れても一緒に居てよ」と肩を抱く。
「当たり前でしょ!あたしが花沢のブランド目当てで結婚決めたみたいな...道明寺みたいなこと言わないでよ」
赤く染めた頬を膨らませて、尖らせた小さな唇。
「うん。顔だもんな...アハハ」
趣味のようなリアルシミュレーションのような感覚で始めたワイン作りだけど、今は本当に心からこの丘を、この景色を残して良かったと思う。
夢が出来た。
「いつか二人でワインメーカーになろうよ」
やりたいこともなりたいものも無かった。
決められた人生の道程が当然でそれしかないと信じて疑っていなかった。
「もしも」なんて考えた事も無かった。
つくしが言う人生プランみたいなものは俺にはずっと無かったけれど、この丘の上でつくしと一緒にワインを開けて、その景色を仰ぎ見た時に世界がたちまち広がった気がしたんだ。
「類が引退したら...の話?」
「そ」
「おじいちゃんとおばあちゃんで労働はキツイんじゃない?」
あたしはまだしも俺が農作業なんて身体を使う仕事は今だって無理だろうに、老体では...なんてブツブツと独り言のように顔を引き攣らせるから笑ってしまう。
「そんな年寄りになるまで俺に働かせる気?」
「え? だって大企業の社長ってその後は会長になって相談役になって...ほぼほぼ死ぬまでみたいな感じじゃない?」
確かにそんな事はあるのだけれど、ほぼほぼ死ぬまで...とかつくしの物言いは相変わらず面白い。
「俺は早々に引退するよ」
「いいの?」
良いも悪いも無い。
これは俺の......俺とつくしの二人の人生だ。
「世襲に拘りは無いんだ」
実のところ父も自分の後は俺...とは考えていないようなのだ。
「いつかは社長に就任するよ。それが俺の役目だとも俺は理解してる」
父→俺ではなくて、父→誰か→俺みたいな感じになるんじゃないかな?と言えば、年齢的にもそうだよねとつくしは頷く。
「でも花沢専務は我社期待のNO1次期後継者候補だよ? 多分類はすぐに社長になるよ」
「...そうなったらなったで引退時期をもっと早めればいいよ」
「そんなうまくいく?」
「大丈夫。だから、俺たちに子供が出来たとして...何が何でも会社を継がせるって訳じゃないから」
「うん /// 」
子供という単語に頬を赤らめるつくしの黒髪を撫でて、「だから...」と耳元に唇を寄せる。
その手を取ってその場に跪く。
濃紺のベルベットのケースの中にはエタニティリング。
俺が想像していたプロポーズってこういうのだよ。
見上げるのは宝石みたいに輝いている黒い瞳。
「愛してるよ。結婚しようよ」
眼下に広がる葡萄畑。
陽の光を浴びた黒髪が風に舞う。
「はい /// 」
いつか、この丘の上で最高のワインで乾杯しようよ。
どうしようもなく愛しているから。
親愛も純愛も全ての愛はここにある。
遠くからやってきた初恋は夢も希望も連れて来た。
運命の女神が靡かせる黒髪にキスを落とす。
これから先の未来は知りようも無いけれど、
いいものが出来ても出来なくても良いんだ。
ただ、いつだって誇らしくこの言葉を贈るよ。
「愛してる」って。
Fin.
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編集 / 2023.06.02 / コメント: 6 / トラックバック: 0 / PageTop↑
コメント
Re: タイトルなし
ビオラさま
こんにちは。
そう...ただ運命だと受け入れて社長になるのではなく自分の意思でそうなって、それからの夢もね...類くん成長したでしょ?w
きっといつか2人でワインメーカーになるよ!
こちらこそ今回も最後までお付き合い頂きたくさんのコメントありがとうございました。
とても励みになりました。
こんにちは。
そう...ただ運命だと受け入れて社長になるのではなく自分の意思でそうなって、それからの夢もね...類くん成長したでしょ?w
きっといつか2人でワインメーカーになるよ!
こちらこそ今回も最後までお付き合い頂きたくさんのコメントありがとうございました。
とても励みになりました。
[ 2023.06.03 17:51 | so | URL | 編集 ]
Re: タイトルなし
きょん!さま
類が静への心情を振り返り決別をする回ね...あれは後半の...って言うか、ある意味クライマックス感w
結構大きなポイントとして書いた回だったので気に入って頂けて嬉しいです。
最後の最後でプロポーズもキメた類...良かったよねw
今回も最後までお付き合い頂きたくさんのコメントありがとうございました。
とても励みになりました。
類が静への心情を振り返り決別をする回ね...あれは後半の...って言うか、ある意味クライマックス感w
結構大きなポイントとして書いた回だったので気に入って頂けて嬉しいです。
最後の最後でプロポーズもキメた類...良かったよねw
今回も最後までお付き合い頂きたくさんのコメントありがとうございました。
とても励みになりました。
[ 2023.06.03 17:48 | so | URL | 編集 ]
Re: タイトルなし
you330さま
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
楽しんでくれたなら嬉しいです。
拍手コメントも読ませていただいていましたよー。
どうもありがとうございました。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
楽しんでくれたなら嬉しいです。
拍手コメントも読ませていただいていましたよー。
どうもありがとうございました。
[ 2023.06.03 17:44 | so | URL | 編集 ]